「省略」と「割愛」の違い!使い分けのコツ

「省略」と「割愛」の違い・使い分けのコツ

ことばの博士
省略」と「割愛」は類義語ですが、その意味に違いはあるのでしょうか。

省略」は「簡単にするために一部を省くこと」、「割愛」は「おしいと思いつつ省くこと」という意味の違いがあります。

省略」は「文章など簡単にするために一部を省くこと」という意味です。

省略」の‟”は「はぶく」、‟”は「細部をはぶいて簡単にすること。あらまし」という意味で、合わせて「細部をはぶいて簡単にすること」という意味になります。

一方、「割愛」は「おしいと思いつつ手放したり省いたりすること」という意味です。

割愛」の‟”は「一部をわけはなす」、‟”は「大切なものを放したくないと思う。おしむこと」という意味があります。

合わせると「大切なものをおしみながら一部をわけはなす」すなわち「おしみながら一部を手放したり省いたりすること」という意味になります。

助手猫
割愛」には「おしむ気持ちがある」のがポイントなんやで~。

「省略」の意味・使用例

「省略」の意味

省略」は「文章など簡単にするためにその一部を省くこと」という意味です。繰り返すまでもないと思う部分や、表現しなくても分かりそうだと思う部分を省きます。一般的に「しょうりゃく」と読みますが、「せいりゃく」とも読めます。

ことばの博士
省略」の類義語に「略す」「省く」などがあります。

「省略」の基本例

  • 「以下省略
  • 「説明は省略します」
  • 省略する」

「省略」の例文

  • 重要な部分は先に出ているので、後の部分は以下省略とする。
  • 現場で実際に行いながら説明していくので、ここでの説明は省略します。
  • 余計な手間を省くために、社内の文書はなるべく省略する。

「省略」の文献例

  • ・・・の回答の場合、男女平等教育の「目標」は団体、神奈川県双方の共通認識であるとして省略し、回答を次のようにすると少しはわかりやすくはないだろうか。「日本語練習帳」のつ・・・ 紀司 勲(著)「市民がつくるくらし・自治・未来」
  • ・・・には、特筆に値しない、長く退屈な部分がつきものです。だからといって、その部分を省略したり、小説を書くときのように、脚色を加えて間をもたせるわけにはいきません。そう・・・ 菅野 圀彦(著)「ハンマー・オブ・エデン」
  • ・・・藩士です。明治の初年―それをいろいろ話すと、私の話までなかなか及ばないから、省略しておきますけれども、福沢諭吉のほとんど最初の弟子として、小泉信三のお父さんであ・・・ 貝塚 茂樹(著)「最終講義」

「割愛」の意味・使用例

「割愛」の意味

割愛」は「手放すのはおしいと思いつつ手放したり省いたりすること」という意味です。

また、「割愛」には「公務員が他の自治体などに籍を移すこと。大学の職員が他大学に籍を移すこと」という意味や、「愛着の気持ちを断つこと」という意味もあります。

ことばの博士
割愛」の類義語に「割譲かつじょうと読む。所有物の一部を他に譲ること)」などがあります。

「割愛」の基本例

  • 「一部を割愛する」
  • 割愛した作品」
  • 割愛した内容」

「割愛」の例文

  • お便りコーナーにたくさんのメッセージを頂いたが、紙面の都合上一部を割愛する。
  • 展覧会では展示数に限りがあり、割愛した作品も多い。
  • 会議で時間が足りずに割愛した内容は、なるべく早くに連絡します。

「割愛」の文献例

  • ・・・お便りは、できるだけ原文のまま掲載しておりますが、誌面の都合上、多少、割愛または補足させていただくことがあります。また、本欄及び編集部にお送りいただいたお・・・ 堀 文子(著)/ 実著者不明「サライ」
  • ・・・れている。私たちは、この本の翻訳に当たって、あまりにも英国民向けと思われる部分を割愛した。しかし、チャールズ皇太子夫妻、とくにダイアナ妃をめぐって数々の話題が入り乱・・・ 浅井 泰範(著)「チャールズ&ダイアナ」
  • ・・・にならうといふ植物学者夫妻と親しくなつたか、それは話が込み入つてしまふので割愛致しますが、以来六十年、服部先生が世を去られてからでも満三十年、私と私の家族とは・・・ 阿川 弘之(著)「春風落月」

記事の参考文献

  • 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・山田明雄・上野善道・井島正博・笹原宏之(2017)『新明解国語辞典』第7版.三省堂
  • 編 林史典・林義雄・金子守(2016)『学研現代標準国語辞典』改訂第3版.学研プラス
  • 小学館「デジタル大辞泉」<https://dictionary.goo.ne.jp/jn>(参照日2024年9月24日)
北澤篤史サイト運営者
1984年、大阪府生まれ。 著書 『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社、2024) ことわざ学会所属。ことわざ研究発表『WEB上でのことわざ探求:人々が何を知りたいのか』(ことわざ学会フォーラム、2023)
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