「観賞」と「鑑賞」の違い・使い分けのコツ
「観賞」と「鑑賞」は、どちらもカンショウと読む同音異義語です。
「観賞」は「自然のものを見て楽しむこと」、「鑑賞」は「芸術作品を見たり聞いたりして楽しむこと」という違いがあります。
どちらも「見たり聞いたりして楽しむ」という意味は同じで使い分けが難しく感じますが、その見る対象や楽しみ方によって使い分けられます。
「観賞」の”観”は「ながめる。みる。」、”賞”は「めでる。楽しむ」という意味があり、二つの漢字から「見たり眺めたりしてそのものをめでたり楽しむこと」という意味になります。
「鑑賞」の”鑑”は「過去の例などと照らして考える。よしあしを見分ける」という意味があり、”賞”と合わせると「その作品を過去のものと照らし合わせたり、自分でよしあしを考え、その作品の良さを楽しむこと」という意味になります。
「鑑賞」の方が、「観賞」と比べると、頭で考えたり、理解した上で、みるという要素が強いです。
「観賞」は景色や動物など自然ものの良さを感じて楽しむことで、「鑑賞」は絵画や能楽など芸術作品を対象としてその良さを楽しむことやで~。
「観賞」の意味・使用例
「観賞」の意味
「観賞」とは「動植物や景色などを見たり、鳴き声や音を聞いたりして、心を楽しませること」を意味します。自然のものの美しさや良さをそのまま味わい楽しむことです。
「観賞」は自然のもの、「鑑賞」は芸術作品ということで、「観賞」の方が、素直に見たままを楽しむという要素が強いです。
「観賞」の基本例
- 「観賞魚」
- 「花を観賞する」
- 「観賞植物」
「観賞」の例文
- ずっと欲しかった観賞魚の金魚を飼育するために、水槽を購入した。
- 家族で高原に出掛け、高地に自生する珍しい花を観賞する。
- 部屋が殺風景だったので、観賞植物を飾った。
「観賞」の文献例
- ・・・類と並んで冬の季語に入っている。その解説によると、本州中部以南の海辺に自生し、又観賞用として庭園に裁培されるとある。勉強不足で石蕗の花はお寺に多いんだなと思うだけで・・・ 井上 実(著)「魚の目は泪」
- ・・・棠やライラックの花が咲き香っておりました。 「恩来同志も花が好きでした。ゆっくり観賞する時間はありませんでしたが、少しでも心が休まるように、工夫して、いろいろな花を・・・ 池田 香峯子(著)「香峯子抄」
- ・・・実は日本にはもう一つのお月見があった。「一三夜」といって、旧暦九月一三日夜の月を観賞していたのである。 十三夜の歴史は古く、日本の朝廷が中国の風習をまねて十五夜の宴 ・・・実著者不明『365日「今日は何の日か?」事典』
「鑑賞」の意味・使用例
「鑑賞」の意味
「鑑賞」とは、「映画や舞台、絵画などの芸術作品に触れたり見たりして味わい楽しむこと」を意味します。芸術作品をただ見たり聞いたりするだけではなく、作品を理解してその良さを楽しむことです。
同音の「観照」が「ものの本質を冷静に見ること」という意味でとても似ています。
「鑑賞」の基本例
- 「映画鑑賞」
- 「音楽鑑賞」
- 「絵画を鑑賞」
「鑑賞」の例文
- 友人と楽しみにしていた邦画の映画鑑賞に行く。
- 彼は音楽鑑賞が趣味で休日は一日中聴いている。
- 家族で美術館に行き、色々な作風の絵画を鑑賞する。
「鑑賞」の文献例
- ・・・ージ発表を主体とする学園祭第3次 展示発表を主体とする学園祭・専門家の音楽・演劇鑑賞会や地域の音楽・演劇サークルの出演等を加え文化の薫りのある学園祭とする。ウ 家庭・・・ 高城 修身(著)「子どものための学校5日制」
- ・・・るだけ壁には設けない方がよい。●床の材料・色/ 天井・壁と基本的には同じである。鑑賞することは同時に歩行を伴うから、不用意な段差やスロープは設けない。滑りにくく歩き ・・・井出 洋一郎(著)美術館学入門
- ・・・歌謡・歌謡の流れ―出雲の阿国・芸能の様式化―謡曲の起源、鑑賞・芸能の様式化―狂言・説教節と御伽草子・戦の語り・比丘尼の語る英雄伝説三.異界総・・・ 道浦 母都子(著)「本の窓」
記事の参考文献
- 編 林史典・林義雄・金子守.(2016)『学研現代標準国語辞典』第3版.学研プラス
- 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・山田明雄・上野善道・井島正博・笹原宏之. (2012)『新明解国語辞典』第7版.三省堂
- 編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂
- 編 新村出(2018)『広辞苑』第七版.岩波書店
- 小学館.「デジタル大辞泉」.<https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年8月1日)