「脅威」と「驚異」の違い!使い分けのコツ

「脅威」と「驚異」の違い

「脅威」と「驚異」の違い・使い分けのコツ

「脅威」「驚異」
ことばの博士
脅威」と「驚異」は、どちらもキョウイと読む同音異義語です。

脅威」は「強い勢いでおびやかすことや、おびやかされること」、「驚異」は「思いもつかないような驚くべきこと」という意味の違いがあります。

脅威」は「強い力や勢いでおびやかすことや、おびやかされて感じる恐さ」という意味です。

脅威」の“”は「おびやかす」、‟”は「いきおい」という意味があり、合わせると「いきおいよくおびやかす」すなわち「強い勢いでおびやかすことや、おびやかされること」という意味になります。

脅威」はなにものかの威力や勢いにおびやかされて感じるものなので、「脅威」のない状態とは、平穏な状態といえ、脅威ネガティブなイメージの時に使われることが多いです。

たとえば有事なので、「近隣諸国の脅威に備える」という状況を思い浮かべれば、イメージしやすいでしょう。

一方、「驚異」は「思いもつかないような驚くべきことや、その驚き」という意味です。

驚異」の‟”は「おどろく」という意味があり、‟”は、「他と違っている」という意味があるので、「他と違うほどの驚き」すなわち「思いもつかないような驚くべきこと」という意味になります。

驚異は、驚くべきことでもすばらしいと感じる時に使うことが多く、ポジティブなイメージで使われることが多いです。

助手猫
”と‟”の違いに注目すると意味が分かりやすいんやで~。

「脅威」の意味・使用例

「脅威」と「驚異」の違い

「脅威」の意味

脅威」は「強い力や勢いでおびやかすこと、何ものかにおびやかされて感じる恐さ」という意味です。

脅威」は「脅威を与える」のように送り手側でも、「脅威を感じる」のように受けて側でも使えます。

ことばの博士
脅威」の類義語は「怖気」「威嚇」などがあります。

「脅威」の基本例

  • 脅威を感じる」
  • 脅威を与える」
  • 「戦争の脅威にさらされる」

「脅威」の例文

  • 相手のエースストライカーには、脅威を感じる。
  • 大勢の兵士のパレードは、周辺諸国に脅威を与えた。
  • 国境付近で武力衝突が起き、近隣住民は戦争の脅威にさらされている。

「脅威」の文献例

  • ・・・おける平和と安定に貢献するものであり、逆に日米関係の悪化はこの地域の平和に対する脅威であるということを、近隣諸国に説得する努力を継続すべきである。 最後に、日本は安 ・・・田中 明彦(著) 「日本戦略宣言」
  • ・・・的で明確に描くために、まず自社の現在の強みと弱み、今後の成長にとってのチャンスと脅威を分析することが有効である。この手法は、経営学の世界ではSWOT分析と呼ばれる( ・・・清水 秀晃(著)「企業再生の人事戦略」
  • ・・・外の火山ガスも大量に放出されたと考えられている。なかでも二酸化硫黄は生命にとって脅威となったはずだ。上空で水蒸気と反応して亜硫酸となり、地球規模の酸性雨を降らせた可・・・井手 真也(著)「大量絶滅」

「驚異」の意味・使用例

「脅威」と「驚異」の違い

「驚異」の意味

驚異」は「思いもつかないような驚くべきことや、その驚き」という意味です。

驚異は上述のようにポジティブな意味合いで使うことが多く、人の力の及ばない自然の不思議さや、スポーツでの新記録など、人智を超えるような事柄を表す時に使います。

ことばの博士
驚異」の類義語は「驚き」「愕然」などがあります。

「驚異」の基本例

  • 「自然の驚異
  • 驚異のパワー」
  • 驚異的」

「驚異」の例文

  • 昨年の超大型台風は、まさしく自然の驚異だ。
  • 頑固な油汚れがこんなにきれいに落ちるなんて、この洗浄力は驚異のパワーだ。
  • これまでの世界記録を10分以上も縮めるとは、驚異的な走力だ。

「驚異」の文献例

  • ・・・戸、明治、大正、昭和の絵双六百七点を展示)には、延べ六千人の入場者があったことも驚異である。これらの事実は、絵双六がもつある種の魔力のようなものが、日本人の琴線に・・・ 山本 正勝(著)「双六遊美」
  • ・・・たちであった。二人とも今きわめて重要な機会を迎えているのだ。 前年十一月の選挙で驚異の勝利をおさめ、この年の一月、大統領職に就任してまもなく、ジョン・コーマックは ・・・フレデリック・フォーサイス(著)/ 篠原 慎(訳)「ネゴシエイター(上)」
  • ・・・したのは昭和二八年である。三〇年の歳月を要している。つまり、前にあげたテレビに驚異的な発展をもたらした諸要因が、ラジオの場合にはことごとく劣っていたか欠如していた・・・ 竹山 昭子(著)「昭和文化」

記事の参考文献

  • 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
  • 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
  • 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年10月16日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年10月16日).
北澤篤史サイト運営者
1984年、大阪府生まれ。 著書 『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社、2024) ことわざ学会所属。ことわざ研究発表『WEB上でのことわざ探求:人々が何を知りたいのか』(ことわざ学会フォーラム、2023)
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