「決済」と「決裁」の違い!使い分けのコツ

決済と決裁の違い

「決済」と「決裁」の違い・使い分けのコツ

決済と決裁
ことばの博士
決済」と「決裁」は、どちらもケッサイと読む同音異義語です。

決済」は「代金などの受け渡しをし、売買取引を済ませること。」で、「決裁」は「権限を持つものが、部下などの出した案の可否を決めること。」という意味の違いがあります。

決済」は「代金や証券、商品などを受け渡して売買取引を済ませること。」という意味です。

決済」の“”は「最終的に定める。思い切って」という意味があり、‟”は「すます。しあげる。」という意味があります。

合わせると「最終的に定め、済ます」という意味になりますが、「決済」の「代金などの受け渡しをし、売買取引を済ませること。」という意味のイメージには少し遠いので、漢字各々から意味を考えるのは難しいかもしれません。

決済」は売買契約に基づいて「買い手が代金などを支払い、その対価として売り手が金融商品や商品などを受け渡す」ということにより、売買取引を終了することになります。

私たちが普段買い物などをしたり、例えば美容室に行ったりするときも、お金と物やサービスの取引が日常的に行われており、身近に「決済」は行われています。

一方、「決裁」は「権限を持つものが、部下などが提出した案の可否を決めること。」という意味です。

決裁」の‟”は「是非善悪を判断して決める。処理する。」という意味があり、上述の‟”と合わせ「最終的に是非を判断して決める」すなわち「権限を持つものが、部下などが提出した案の可否を決めること。」という意味になります。

決裁」は組織における意思決定のプロセスを指し、特にビジネスの世界などでよく使われる言葉です。

部下が出したアイデアなどの提案を権限を持つ上司が、採用などの可否を決めることで、例えば提案が採用されると、「私たちの提案の決裁が下(お)りた」のように使われます。

なお「決裁権」という言葉がありますが、「部下などから提案された事柄について、決裁を行う権限」のことです。この権限は役員、上司や管理職などに与えられます。

助手猫
決済」は「金銭などでの売買取引」で「決裁」は「提案の可否」で使われるんやな〜

「決済」の意味・使用例

決済とは

「決済」の意味

決済」は「代金や証券、商品などを受け渡して売買取引を済ませること。」という意味です。

例えば買い物で、お金を払い商品をもらうことなども「決済」といい、身近な言葉です。最近では「キャッシュレス決済」などという言葉も普及し、聞き馴染みがあると思います。

ことばの博士
決済」の類義語は「支払い」「清算」などがあります。

「決済」の基本例

  • 「現金で決済する」
  • 決済日を定める」
  • 「15日までに決済が必要です」

「決済」の例文

  • その件はまだ未決済と聞いています。
  • 当店もキャッシュレス決済を導入することにした。
  • この取引は決済が完了している。

「決済」の文献例

  • ・・・れる。 上の式で,非資金的諸経費を控除すること,また「未払費用」は諸経費関係の未決済額であることについては,これまでの説明で容易に理解できるであろう。なお,経費関係…森脇 彬(著)「資金と支払能力の分析」
  • ・・・稼ぎしているんだ」 「手形の決済日がくるまでだよ」 「手形の割引もしないで、手形決済日がきたって天野会長は決済しないぜ。M商事もしない」 「そこだよ。手形が現金化さ…梁 石日(著)「裏と表」
  • ・・・済だけでなく,カストディー業務,クリアリング業務,ディーリング活動などの各段階の決済メカニズムで生じている.また,CPや株式の発行者とエージェントバンクとの間や,エ…野下 保利(著)「貨幣的経済分析の現代的展開」

「決裁」の意味・使用例

決裁とは

「決裁」の意味

決裁」は「権限を持つものが、部下などが提出した案の可否を決めること。」という意味です。

決裁」は、権限を持つものに提案の可否を判断してもらうことを「決裁を仰(あお)ぐ」「決裁を請(こ)う」、提案が採用されることを上述のように「決裁が下(お)りる」という風な言い回しをします。

ことばの博士
決裁」の類義語は「裁断」「裁量」などがあります。

「決裁」の基本例

  • 決裁が下りる」
  • 決裁を仰ぐ」
  • 「案件を決裁する」

「決裁」の例文

  • 新しいプロジェクトの決裁が下りた。
  • 本件を円滑に進めるためには、社長の決裁を仰ぐべきだ。
  • こちらの案件は月末までに決裁していただけますか。

「決裁」の文献例

  • ・・・権限が与えられており、権限内の案件は決裁後即実行に移され、権限を超える案件は本部決裁に回されることになります。 しかし、本部においても支店長意見は尊重され、微調整が…村本 観(著)「銀行と上手くつきあう法」
  • ・・・が空欄のものばかりで積み上げられたものじゃないでしょうか。そんなわたしの知らない決裁書が毎月何千万円もあったというのです。 それから党費肩代わりの件は10万人規模の…古関 忠男(著)「言いたい事は山ほどある」
  • ・・・だった。「もう遅い」との声のなか、社長の山内は、一気に100万台を超す大量生産を決裁、販売価格を1万4800円とした。3万〜5万円はする他社のゲーム機の半値以下とい…有森 隆(著)「経営者を格付けする」

記事の参考文献

  • 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
  • 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
  • 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年10月29日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年10月29日).
北澤篤史サイト運営者
1984年、大阪府生まれ。 著書 『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社、2024) ことわざ学会所属。ことわざ研究発表『WEB上でのことわざ探求:人々が何を知りたいのか』(ことわざ学会フォーラム、2023)
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